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御碕のファストフードはぷりっぷり

みさきのふぁすとふーどはぷりっぷり 

食べる出雲エリア平成時代

 日本海が一望できる日御碕灯台へと足を向ける。道すがら、ちょっと小腹が空いたのだけれど、コンビニなど一切見当たらない。とりあえず売店には何かあるだろうと向かうその先にあったのは、シンプルながらもガッツリ食べ応えのある“御碕のファストフード”だった。


 駐車場に車を停めドアを開けた瞬間、潮風とともに鼻をくすぐる“いい香り”に誘われるがまま灯台への道へと向かう。道の両側には地元のお土産屋さんが並ぶ。人が通る度に「どうぞ!焼いたイカはいかがですか?美味しいですよ」、「かき氷もありますよ」などと四方八方から声が飛ぶ。目的地は灯台。浴びせられる呼び掛けをかいくぐって灯台へまっしぐらで歩く。
日本一の灯台を登って降りると、もう汗だく。岬へ吹き注ぐ潮風が幾分かは押さえてくれる。来た道を帰るその方向には「海の味通り」と書かれた看板。そうなのだ。お土産屋さんではなく、れっきとした食べ物屋さんだったのだ。だから、帰りの道でも呼び掛けは吹きかかる。とはいえ、先を急ぐ旅、良い香りに誘われながらも駐車場への道を急ぐ。
駐車場を目前にして遂にお店の人と目が合ったために休憩を決断。いや、目が合ったからではない、イカを焼く音と香りにとうとう負けたのだ。
入ったお店は「眞野商店」。母子で営む比較的大きなお店だ。店内の冷房は適度に効いており、汗を止めるには十分である。注文は、ビールを呑みたいのを我慢して、ノンアルコールにイカ焼き。注文ついでにこの界隈の話を聞いてみた。元々、神社の周辺などに点在していたお店が、およそ45年前に現在の小道沿いに集まり、軒を並べるようになったのだという。「あれだけ競って呼び掛けしていて、お店同士はギスギスしていないのですか?」と聞いてみた。「いやぁ、まぁお互い様ですし、そんなことはないですよ」と意外とあっさりした答えをしたのは、眞野兼明さん。会社員をやっていたが、父親が亡くなったのを機に母親を手伝いお店を切り盛りしている。
 店先の焼き場では、その母親がイカを焼きだした。きれいな色をした一杯のイカが手際よく一人前のサイズに切り分けられる。鉄網の上に移されたイカは、次第に反り返ろうとする。それを素早い手の動きでひっくり返す。これを何度か繰り返すうちに、美味しそうな焼き色が付いてくる。同時に潮の香りと香ばしさが入り交じった独特の香りが胃袋を刺激する。焼き上がると、串を刺して数カ所に切り込みを入れ、“オリジナル”の醤油ダレを全体に塗り付けて出来上がり。
その場でかじりつくのもよし、お店でゆっくり食べるのもよし。出来立ての熱々を、タレが口の周りに付いたりするのもおかまい無しで一気にかぶりつく。プリップリのイカの身は、一口毎に甘さが染み出て甘辛のタレも相まって口の中に広がっていく。そこにつめたい冷たいノンアルコールビールがシュワシュワと美味しい刺激を加えて過ぎていく。日本海を丸ごと包み込んだ焼きイカとの格闘はほんの数分だったが、岬の一時を充分に堪能できる一串だった。
300円という安さに驚くと、実は20年以上前からこの価格との事。もしや価格の優等生か。
恐るべし、“御碕のファストフード”!!

  ※価格の優等生:昔から今に至るまで価格が安定している品物




海の味通りの方向

行き先案内看板

お土産屋さんなど立ち並ぶ海の味通りの風景

海の味通り

美味しそうに焼け、ぷりっとしたイカ焼き

イカ焼き

ブリの仲間であるヒラマサを使った「ヒラマサ丼」

ヒラマサ丼