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日御碕神社で仲よしこよし

ひのみさきじんじゃでなかよしこよし 

見る出雲エリア不明

日御碕(ひのみさき)街道も終わりに差しかかる頃、突如あらわれる朱塗りの日御碕神社。家並みや漁港の側に建てられ、地元の人びとにとても大切にされている。日御碕漁港に浮かぶ「経島(ふみしま)」は、以前「神の住む島」であり、今は「ウミネコの住む島」になっている。「和布刈神事(めかりしんじ)」にも登場するウミネコと、神、人びととのかかわり。そんなことを考えながら聞くウミネコの声は、いっそう胸に沁みるもの。


日御碕街道が海岸線から離れ、少し山に入った辺り、山と海に挟まれるような場所に日御碕神社がある。朱塗りの社は遠目からも鮮やかで、思わず「わぁ・・きれい!」と歓声を挙げた。
「神社の修繕が行なわれまして、塗り替えられたんですよ。」
なるほど、きちんと手入れをして守り、大切にされている神社なのだ。
山側の街道からぐるりと弧を描くようにカーブを下っていく。側まで行くと、かすかに潮の匂いがする。すぐ近くに日御碕港という漁港があり、民家もあり、人びとの暮らしがある。そのなかで、朱塗りの社が威厳を保っている。
歴史を感じられる古い鳥居をくぐると、木製の大きな彫刻物が目に入った。神職者が、岩場で海を覗きながら、お供え用のワカメを採っているようすが彫られたもので、何かの神事の一場面らしい。
「和布刈神事のようすです。」三上さんが続けて「ウミネコが運んできたワカメを神前にお供えしたという故事から来ています。」と説明されたように、ワカメをくわえたウミネコの姿も彫られている。
ここから少し離れた宇龍港(うりゅうこう)に神職だけが渡る「権現島」があり、旧暦の1月5日に日御碕神社から神職が赴いて、和布刈神事が執り行われるそうだ。「この神事が終わると、ワカメが解禁になるんです。」地元の人びとの、自然への感謝と畏れ、神を敬う心を感じた。
神門をくぐり抜けると、正面に日沈宮(ひしずみのみや)、右手の高台に神の宮(かむのみや)がある。日没宮は日御碕神社の下の宮であり、天照大御神(アマテラスオオミカミ)が奉られている。また、上の宮である神の宮には、天照大御神の弟神である神素盞鳴尊(カムスサノオノミコト)が奉られている。お参りしようとして、日沈宮の立て札に気づく。「神の宮にご遷座中」つまり、姉弟仲良く神の宮にいらっしゃるということなのだけど・・・。
天照大御神といえば、弟の神素盞鳴尊の暴挙を悲しんで、身を隠したという『天の岩戸』があまりにも有名。三上さんに「同居できるほど、仲のよいご姉弟でしたっけ?」とついつい聞いてしまった。「神素盞鳴尊は本来心根の優しい方なんですよ。八岐の大蛇(ヤマタノオロチ)に困り果てた民衆を、見るに見かねて退治なさったわけですから。」納得、納得の答えには、神を大切に想う心が滲んでいる。
「出雲大社では二礼 四拍 一礼ですが、こちらでは二礼 二拍 一礼します。」出雲大社の祭神、大国主神(オオクニヌシノミコト)は、神素盞鳴尊の子どもであるという。出雲大社と作法が違うのも当然のこと。そして、もうひとつ違いが。
「神殿の造りが違うんですよ。出雲大社は妻入り(つまいり)で、こちらは平入り(ひらいり)なんです。」そういわれて、神の宮の屋根をよくよ〜く見てみると、建築に詳しくない私たちでもわかりました。出雲大社まで来たときは、ぜひ日御碕神社にも寄って、この違いを自分の目で見て欲しい。
もうひとつ見て、連れて帰って欲しい物が、神社のように赤く塗られた「達磨のおみくじ」。手の平サイズのかわいい木製の達磨に、下側から穴を開けておみくじを入れたもの。最初から目が入っているので、手に入れるだけですでに目的を達成できているかも?
思わぬ収穫を手に日御碕神社を出ると、三上さんが「経島に寄りましょうか」といって下さった。経島は日御碕漁港にある岩でできた島で、ウミネコの繁殖地になっている。ここは日御碕神社、日没宮が建立される以前、天照大御神が奉られていた場所でもある。神素戔鳴尊は、神の宮の後方にある隠ヶ丘(かくれがおか)にもともと奉られており、それぞれいまの場所に遷座されたそうだ。
「あちらが経島です。ウミネコはまだこの島には来ていませんが、2月頃には上がってますよ。」見ると、大きな島の上に鳥居が建てられている。「人間は、神職以外立ち入ることができないんです。」神とウミネコの島。ふと思った。ウミネコたちは、天照大御神が島を去ったあとも、神を慕ってワカメをお供えしようとしたのかもしれない。その想いは「和布刈神事」として、いまも大切に受け継がれている。
「次へ行きましょうか。」一瞬、ウミネコの声が聞こえた気がした。




日御碕街道から見える日御碕神社

日御碕神社

朱塗りが美しい日没宮(左)と神の宮(右)

日御碕神社

お土産にしてもかわいい達磨みくじ。

達磨みくじ

まだ静かな神とウミネコの島。

経島