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出雲うどんには出雲おろち大根

いずもうどんにはいずもおろちだいこん 

知る食べる出雲エリア平成時代

 この「大社の町を楽しもう」のコーナーでうどんを紹介するのは「7分づきのうどん」の小望月さんについで二度目。小望月さんが「やりかたは違うようなんだけど、あそこも黒いうどんを出されてますよ。」と推薦されたお店がここ山太(さんた)である。橙色ののぼり旗に出雲うどんの文字がときおり吹く風にハタハタと踊っている。


 広い和室の客席に運ばれてきた出雲うどんは、黒いシャープな器に縁起の良い出雲らしい赤と白の彩りがあり、さらに青ネギと梅干しも添えられて、普段には見かけぬうどんの風情である。決して白いとは言えないうどんが、醤油ベースの混合削り節の出し汁の中からつやつやと光っている。紅白の彩りを麺に混ぜていただくと、麺はうどんにしては細く、シコシコとした腰があり、つるつるとして食べやすい。やや辛口の出汁と共にピリッとした辛さが口に広がる。これが紅白の正体である。紅白共に辛味大根。名前のとおり辛い大根で、近年出雲地方で復活された地野菜。ひげ根の多いその姿から「出雲おろち大根」とも呼ばれている。2008年頃から松江市にある島根大学の農場で改良が重ねられて来た。おろし器ですって4分後から辛くなるという曲者である。イソチオシアネートとという辛味成分が空気と触れ合って辛味が増してくるものだそうで、30分後ぐらいには辛味が無くなってしまうらしい。実は出雲うどん(550円)は、この出雲おろち大根を使うために復刻されたという。何やら経緯に物語がありそうである。

 出雲うどんは、この地方では小麦を作っていた頃、農家でうどんを、家にある石臼で自家消費用に粉を挽いて、うどんにしていたという。そのうどんは、ぼそぼそと指の長さぐらいで切れ切れになったものだったらしい。そして白くは無かった。小麦の殻は取ってあるが、石臼で表皮、胚芽、胚乳を一緒に挽いたからである。そんな話をお婆さんから聞いていたお店のご主人の森山太史さんが、出雲うどんとして復刻したのであるが、復刻に半年ぐらい試行錯誤したそうである。ぼそぼそと切れたりしない麺になるようにするのが大変だったそうである。その奮闘努力の目的はというと、なんと先ほどの 出雲おろち大根を味わってもらいたいからだったという。

 店には大根めしがあり、大根弁当も開発中だという。もちろん出雲おろち大根は自家栽培もしている。大根ご飯(100円)をいただいた。これが大根かな?、とご飯の中から1センチ四方ぐらいの塊を取り上げ、口に運ぶと、味わいは大根であるが、少しサクサク感のある歯ごたえで大根というより何か芋のようにも感じる。出雲おろち大根はデンプン質も多いことから、しっかりした食感になるのだそうだ。

 これもオススメなんですが、と出てきたのが宝庫(ほうこ)うどん(700円)。まるで出雲そばにも見える細麺のうどんであるが、麺の中に緑色の点々が見えるツヤツヤした麺である。だし汁に先ほどの紅白の出雲おろち大根を混ぜて、つゆを絡めて麺をいただくと、シコシコよりは、グリグリとしたモチモチ感たっぷりの新食感である。これがホウコの技である。ホウコという植物は島根県東部の山間部で、昔から草餅に使ってわれており、餅のモチモチ感や伸びを一層豊かなものにし、さらによもぎ餅よりもふくよかな甘さのある味わいも持っている。そんな特徴のある植物である。ご主人の森山さんは、長野県でホウコと近親種の植物を使った蕎麦、長野で幻の蕎麦と呼ばれている「富倉そば」というものを調査に行って、とうとう宝庫うどんの開発に成功したという。富倉も宝庫も縁起の良さそうな名前である。

 こうした腕によりをかけた品々のある山太のお客さんは、ほとんどが大社の町の人たちだそうだ。また出雲市中心部からも食べに来られるとのこと。出雲大社からは1キロメートルほどで歩いて15分程度かかるためか、観光客は少ないそうだが、それでも出雲うどんや 出雲おろち大根の話を聞き伝えに知り、お店を目指して来店される方もあるそうだ。取材に伺った時も、県外の女性客や夫婦連れのお客さんが地域の味を楽しんでくつろいでいた。

営業時間 11時から15時まで
店休日  水曜日
住  所 出雲市大社町北荒木172−6
電  話 0853-25-8378
ホームページ(Facebook)
https://www.facebook.com/山太santa-230036527187629/




紅白のオロチ大根と梅干し、ネギなどの色が際立つ

彩りも美しい出雲うどん

ざるうどん風であるが細麺の宝庫うどん

ホウコの練りこまれた細麺仕立て

客席は8畳二間続きの大きな和室

庭の明るい光が広がる和風の広間

ひげ根がたくさんついた出雲おろち大根

とても辛い出雲おろち大根