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自然?それとも神様のいたずら?日御碕街道

しぜん?それともかみさまのいたずら?ひのみさきかいどう 

見る知る出雲エリア不明

日御碕(ひのみさき)へと出発してすぐに思ったことは、「運転とガイドをお願いしてよかった!」稲佐の浜から日御碕灯台までを結び、ほとんどを海に接する日御碕街道は、急なカーブの連続と勾配のきつい坂道が続く。そこには古代神話の面影が残されていたり、刻々と変化する厳しくも美しい自然の風景が広がっている。せっかくの景色も、自分の運転やバスだとゆっくり見られないもの。タクシーに乗って思う存分楽しんで!


大社町内にて、出雲観光タクシーのドライバー、三上さんと合流して旅はスタート。今日お世話になる三上さんは、ロマンスグレーという言葉が似合う、誠実で穏やかなお人柄。
詳しい位置関係を把握しないまま観光希望地をつらつらと挙げて、「あとはおすすめの場所もお願いします!」とおねだりも忘れずに付け加えておく。どちらかというと、そちらに期待していたり・・・。
希望地まで迎えに来てくれるタクシーなら、悪天候の煩わしさが軽減される。雨の日の観光にはうってつけだなぁ、と思っているうちに、タクシーはゆっくりと出発。
出雲大社を通り過ぎ、静かな稲佐の浜が見えてきた。すると、砂浜を左手に見渡せる場所でタクシーが止まった。「ここは私のおすすめポイントなんですよ。」にこにこしながら三上さんが解説してくれたのは、有名な国引き神話の情景。
「八束水臣津野命(やつかみづおみつぬのみこと)が引っ張ってきたのが右手に見える北山なんですが、このとき、土地を繋ぎ止める杭代わりにしたのがあちらの三瓶山(さんべさん)なんです。」三上さんの指差す海の向こう側には山が連なっており、そのなかに抜き出て高い山が見える。
「そして、手前の砂浜、長浜海岸といいますが、こちらが引っ張ったときの綱の跡だと言われています。」この位置に立って見てみると、三瓶山から長浜海岸、そして私たちを挟んで反対側に広がる北山は、一本線で結ぶことができる。「本当に綱の跡に見える!」思わず叫んでしまった。遥か昔、ここで景色を眺めていた先祖が豊かな想像力で考えたのだろうか。いや、本当に神の仕業なのかもしれない。それにしても、出雲大社の注連(しめ)縄以上に立派な綱だったんだろうなぁ。
再びタクシーが走り始めても話は続き、「昔の北山は島だった」という地殻変動の話まで飛び出した。以前は島だった北山が、いまでは陸続きにつながっている。まさに「国引き」ではないか。
次にタクシーが止まったのは、海沿いに作られた展望台。
「ポイントはたくさんあるんですけど、つぶて岩と筆投島を見るならここからがよいと思います。」そう三上さんがすすめるだけあって、いちばん上まで登ってみると目の前に何も遮るものはなく、海と空だけが広がっている。雲の合間からは光が差し込めて、いまにも神様が降りて来そうな美しさ。巨勢金岡(こせのかなおか)が絵に納めきれない、と筆を投げたという「筆投島」、そして国譲りの際、建御雷之男神(たけみかづちのかみ)と建御名方神(たけみなかたのかみ)が力比べをした「つぶて岩」が一度に見られる場所でもある。
つぶて岩は、本当に何処かから投げられた岩がめり込んだような形をしていて面白い。どちらの神が投げた岩なんだろう?ここからは見えないくらい離れている、稲佐の浜からこの岩を投げたというのだから驚く。メジャー投手もびっくりの豪腕だ。「日御碕は毎日表情が変わるんです。いつ見ても美しくて、飽きないんですよ。」筆投島はたった一日の内にもつぎつぎ景色が変わり、その美しさを描ききれないために筆を投げたんだといわれている。そのことを裏付けるような三上さんの言葉だった。
稲佐の浜から日御碕へと向かうこの道は「日御碕街道」と呼ばれており、急なカーブやきつい勾配が連続するドライバー泣かせな道でもある。
近年の工事で、直角なカーブや車1台しか通れないようなトンネルはなくなってきたものの、「日御碕の若葉マークはこの道で鍛えられる」という話もあるほどだ。そして、日御碕の美しい景色がぎゅっと詰まった場所でもある。「夕日も格別ですよ」とは三上さんの談。
訪れる際は、美しい景色をゆっくり眺められるように、タクシーがおすすめ。お気に入りの景色を見つけたら、「運転手さん、車を止めて!」の一言もお忘れなく。




お世話になった出雲観光タクシーの三上さん。笑顔が素敵!

出雲観光タクシー

北山を背に臨む稲佐の浜から三瓶山までの遠景。

稲佐の浜から三瓶山までの遠景

つぶて岩と筆投島を一望できる場所。(右が筆投島・左がつぶて岩)

日御碕海岸

急なカーブが連続する道。この迫力は体感するしかない!

日御碕街道