メニュー


明暗の中にさまざまな居場所が

めいあんのなかにさまざまないばしょが 

食べる出雲エリア平成時代

 昭和40年ごろ通りにぎっしり詰まった人波に押されて進むしかなかった土曜夜市。そのにぎわいの中心地だった出雲サンロード中町の、今では静かな通りにポッカリと空いた中町公園に面してnaka蔵はある。店主の昌子(しょうじ)さんも、あの土曜夜市の体験者、きっと大人の背中ばかりを見上げて歩いたことだろう。その昌子さんが夢だった喫茶店を、およそ5年かかって実現した。


 九州の由布院から白壁の街倉敷、四国、山梨までも足を運び、気に入った喫茶店には4、5回も通って様々なことを学んだという。今でもあちこち出かけて自らの気持ちを引き締めているそうだ。
 そんな昌子さんだから、店の家具調度に対する思い入れは人一倍である。落ち着く和の要素にお洒落な洋風が、和を壊さないでバランス良く絶妙にコーディネートされている。玄関につるされたランプは元が米蔵だったからレトロな和風でもよさそうなのだが、光の醸す文様が彩りを添えている洋風ランプがノスタルジーではなくポエムの響きを贈っているのだ。

 メニューには美味しそうなハンバーグ料理が並んでおり人気を博しているが、実は唐揚げセットに物語があったのだ。地元では「山校」と呼ばれる出雲高校の南に、今は閉店した「すえひろ食堂」という唐揚げの美味しい店があった。そこのご主人にお願いして、すえひろ特性唐揚げを、すえひろのご夫婦から伝授してもらったとか。もっぱら調理師免許を持つ昌子さんの奥さんがそれを伝えているのだが、材料から製法から伝統の一品となっている。
 それから、お客様がびっくりするのは天を衝く山のように美しく盛り付けられたランチに付くサラダである。多くの人が食べる前に写真をパチリだそうだ。このランチは、予約でほぼ満席となることも多く、行くなら予約をするか昼時をはずすかだと思われる。なお、モーニングが朝9時から午後3時まであるのは四国の喫茶店に習ったものとのこと。
 naka蔵には自家製のスイーツがある。味や形、柔らかさなど今のものになるまでに相当な時間が費やされている。ケーキ専用オーブンで試行錯誤が積み重ねられたロールケーキは、シュガーが振ってあるもののクリーム少なめの甘さひかえめ、きめ細かいしっとり感。紅茶はアイリッシュモルトというドイツからのもので、深いコクがありカカオの香りが立ち上る。

 蔵の内部は、高い天井に太い黒い梁が作る暗さの下に分厚いブビンガ材の赤いカウンターが光を放って存在し、その鮮やかな色の対比が蔵の中の明暗を幻惑させる。周囲の薄暗がりの中にゆったりした椅子がある。蔵の外側には、隣の中町公園とその上の青い空、その下には旭日酒造の白い壁や赤瓦が見える。明るい光が回り込み椅子の緑が広がって開放的。この明と暗、居場所の明暗とそこから見える明暗の組み合わせが何通りもあって、新参者にはまず居心地選びの楽しみが待っているのである。

営業:9:00〜19:00(LO 18:30)
   ランチ 11:30〜14:00 
定休日:毎週水曜日・第4火曜日
駐車場:6台(契約駐車場もあり1時間無料。)
住所:〒693-0001 出雲市今市町中町689番地
電話:0853-31-5880




白色の壁が印象的なnaka蔵の外観

白色の壁が印象的なnaka蔵の外観

白色が基調の明るい表側の店内

白色が基調の明るい店内

赤いカウンターのあるシックな空間

赤いカウンターのあるシックな空間

naka蔵特製のロールケーキ

naka蔵特製のロールケーキ