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大国主のヒメ、本命!?

おおくにぬしのひめ、ほんめい!? 

見る知る出雲エリア平成時代

大国主神には数多くの彼女がいた。というと、「えっまさか?」という人と「そうそう。」という人に大別される。今回は結構本命の彼女の話である。出雲市斐川町に御井神社という井戸を祀る神社がある。その井戸に湧く水は、大国主神の子どもの産湯となったものと伝えられ、安産の社として知られている。


物語は悲しい結末であるが、因幡の国のシロウサギにも通じる話なので、古事記にその由来を訪ねて見よう。大国主命には多くの兄弟として八十神がいたが、八十神たちは稲羽(いなば)のヤカミヒメに求婚したいと思い、みなで稲羽に出かけた。その時、八十神は大国主命に荷物を持たせて連れて行った。この荷物を担いだ大国主神の姿が世に歌われる「大きな袋を肩にかけ〜」である。
この旅の途中で、ワニを騙して隠岐の国から海を渡ったウサギが、騙されたことを知ったワニたちに毛皮をはがされて、素っ裸になっていたところ。通りかかった八十神たちは、肌に海水を付けると癒えると助言した。ウサギがその通りにすると、海塩が乾くと、身の皮が風に吹き裂かれ、痛くてたまらなかった。そこへ、遅れて通りがかった大国主神が「体を水で洗い、ガマの穂を散らした上で転げなさい。」と助言した。そうするとたちまち体が癒えたウサギが大国主神に言った「八十神たちはヤカミヒメを決して得られないでしょう。袋を背負っていても、あなたと結婚します。」と。
 そのヤカミヒメは大国主神の子ども宿しますが、正妻のスセリヒメを恐れて、大国主命に会わずに、御子を木の股に挟んで置いて帰って行ってしまったというのです。社伝では、大国主命の子ども宿したヤカミヒメは、出雲大社へ大国主命を訪ねて来ます。しかし、正妻のスセリヒメが恐ろしくて、大国主命に会わずに帰路についたところ、御井神社あたりで産気づき、「生井(いくい:安産の水神)」、「福井(ふくい:産児幸福の水神)」、「綱長井(つながい:産児寿命の水神)」の3つの井戸を掘って産湯に使われたといいます。そして、その御子を木の股に挟んで置いて帰って行ってしまったと伝えています。
御井神社の祭神は、御井神(木俣神)となっており、大国主神の御子なのです。しかし、専門家によると御井は三井であり、井戸があったところに物語がくっついたと考えているようです。現在社地の西の丘陵で9本柱の柱跡が発見され、近くの谷からは「三井」と墨書された土器も発見されています。また、御井神社の社地は1キロ四方に及んでいたとも言われているので、大昔は、地の底から湧き出る三つの泉を祀った聖地だったのかもしれません。そして、当社の解説板には「日本最古の井戸で宮中にも御分霊して祭られている。」とも書かれています。
さて、この御井神社の南約600メートルの山中に八上姫大神を祀った実巽(じっそん)神社があります。この巽(そん)という文字は、占いの易経の八卦の一つ。方角は南東。御井神社の南東に位置していますが、意味は股とか縁談とかがあるそうです。




赤ちゃんを抱いたお礼まいりも多い

御井神社の鳥居

松の木の元にある生井(いくい)

安産の水神、生井(いくい)

綱長井(つながい)

綱長井(つながい)

実巽神社(じっそん)の八上姫大神扁額

実巽神社の八上姫大神扁額