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みんなのおうち

みんなのおうち 

見る食べる松江エリア

 国道9号線から石宮神社の前を通って、高速道路の橋脚の下を通り過ぎ、椎山1号墳と刻まれた来待石の道標に従って右折しなだらかに左に曲がっていく坂を上がると、見上げるような農家がある。これが、古墳ほど古くはないが築145年、明治初期に建てられた古民家である。ここが、みんなのおうちカフェだ。


 ガラスのはまった木製の玄関をガラガラと滑らせて開けると、若い男性が「いらしゃいませ。」と土間の上にある壁の中から半身を振り向かせて笑顔を見せた。「こんにちは。」と言って目を降ろすと、土間にはいくつもの靴が揃えられて並んでいる。土間に面した昔は襖(ふすま)か板戸であったであろうところに、今はガラスの入った白い戸が並んでいる。これもガラガラと音を立てて開けると、そこにはアンティークな色合いでそれぞれ形の違うソファーや椅子やらが並んでおり、お客様が食事をしたり、お茶を飲んだり、お話したりと、なんともくつろいだ雰囲気である。その部屋は広くて白いのである。

 ソファーや椅子はリサイクルショップで買ったりしたものもあるが、貰ったり作ったりしたものが多いとのこと。「ソファも新しいものよりは、使ったものの方がふかふかして座り心地がいいですね」と店主の太田さんは言う。多くの知り合いや友達、さらに友達の友達が手伝うことで、この古民家の改修は6年を費やして、ここまで来たのだそうだ。白い縁のガラス戸も他から持って来た戸だが、その大きさがこの家に合わなくて、上部の鴨居に木材を付け足して戸がはまるようにしてある。
 今も延々と改修は続いており、家の中の改修はもちろん、ウッドデッキやツリーハウスを作り足す未定の予定があるという。

毎月1回程度のイベントも行われている。竹の器づくり、杵と臼を使った餅つき、薪割り、味噌作りなど大人も子どもも入り混じって毎回10人程度が参加して賑やかに和やかに楽しまれているとのこと。どこまでも自力でできる範囲で、ゆっくりと、その姿を変えて行く「みんなのおうち」。こうした改修やイベントは、みんなのおうちプロジェクトと呼ばれている。

 親の古民家を改修して住んでみようという人や住んでいる家の改修をしたい農家の人、古民家を買い求めて住んでみようという人など、様々な古民家ファンが来訪するらしい。そんな時のアドバイスの一つが、白のように見えて白ではない壁や戸の色だそうだ、これは白ではなくてミルキーホワイトという色なのだそうだ。

 そのミルキーホワイトの部屋の中から二階へと補強された階段をあがっていくと、二階は図書館になっていてたくさんの本が白色電球に照らされて並んでいる。そこには『芸術新潮』や『暮しの手帖』の1970年代版がずらりと並んでいる。置かれた書籍の一つ一つ、そしてその隣り合わせの本の組み合わせにも興味が広がったり、と楽しめる工夫がされていると思う。

 さあ、いよいよカフェである。店主が無農薬栽培するトマトを使った おうちナポリタン800円、オススメのトマトベースでココナッツミルクテーストのToday'sカレーは700円、人気の豆乳ココア400円などがある。カレーが売り切れたというので、目玉焼きの乗ったガパオライスを初体験する。辛い中に玉ねぎの甘さがあり、タイ料理だという。玉ねぎと鶏ミンチ、パプリカ、ピーマンをナンプラーで甘辛く炒めバジルで味を整えて十五穀米の上に置き、さらに目玉焼きが乗っていて、食べやすくスパイシーなひとときを楽しめる。店主の作る無農薬トマトの旬となる5月から12月ごろには、コップの縁に塩をしたトマトスムージーが大人気だそうだ。もちろんトマトをそのまま売っているときもあるという。気になるコーヒーはコロンビアの高地産をネルドリップで抽出していて、マイルドな味わいだった。




森を背景にした築145年の古民家

明治、大正、昭和、平成を生きた古民家

広々とした室内、日本建築のイメージは薄い

壁や襖が無くなった白と黒の室内

目さま焼きの乗ってサラダが付いている

ピリ甘辛のガパオライスはタイ料理

屋根裏部屋にたくさんの本が並んでいる

木の温かみに包まれた屋根裏図書館