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巨石神話伝承〜宍道町の由来

きょせきしんわでんしょう〜宍道町の由来 

見る知る松江エリア不明

この項では「出雲国風土記」(以下風土記)をキーワードに、1スポット、あるいは2スポット単位で風土記にゆかりのある地を訪ねレポートしてみようと思う。第1回目は「石宮神社」。場所は松江市宍道町白石。風土記に宍道(ししぢ)の郷として語られる。宍道は、ご存知の宍道湖の名前にもなっているところ。


宍道町には、町名の由来になったといわれる「猪石(ししいし)の神話」なるものが存在し、その神話の舞台装置となる「猪石」の候補となっているのが、宍道町白石にある「女夫岩(めおといわ)」と呼ばれる巨石で、もうひとつの候補が、同じく白石にある「石宮(いしみや)神社」の神体石と鳥居の脇に鎮座する2つの巨石ということだ。
今回はアクセスのしやすさ。気軽に立ち寄れる(しかも車も止めやすい)スポット。という条件とともに、背後に緑をいただいた境内の苔むした巨石などのロケーションにも風情があるということで、今回はプロローグ的というか、入門的な観点で「石宮神社」に焦点を当ててみたい。

伝承によると、猪狩りをしていたオオクニヌシノミコトに追い込まれた2匹の猪(しし)が南の山に石像となって残ったということから、猪(しし)の道を意味する「宍道(ししぢ)」と呼ぶようになったといわれている。狩りに使った犬も「犬石」と化し、拝殿奥の石柵に囲まれ、ご神体として鎮座している。
本来、この「宍」は「肉」という語意なのだが、どうして「猪」が「宍」になったのかは、私の知識の儚さゆえ判然としない。まあ、当時の人間が食する代表的な肉といえば猪の肉だったろうし、そもそもオオクニヌシノミコトが狩りの対象にしていたわけだから、おそらく「肉イコール猪」ということなんでしょう。

ところで、猪と神話といえば、私のように神話や伝承に明るくない人間にとって、映画「もののけ姫」の猪神「乙事主(オッコトヌシ)」を連想してしまう。乙事主の声は超ベテラン俳優の森繁久彌。ちなみにハリウッド版でのアフレコは「遊星からの物体X」などでB級SF映画ファンにはお馴染みのマッチョな黒人俳優・キース・デイビッド。しかし、乙事主を演じる森繁久彌の老練な声と、野太いキース・デイビッドの声がいまひとつ重ならない。こういう日本在来の物語を欧米で表現(演出)する場合、乙事主がパッと見どおりのステレオタイプな野太い声になってしまうのが面白いというか悲しい。乙事主に森繁久彌をキャスティングするといった繊細な演出は、合理主義の欧米人には文化の違いでしょうか分からないんでしょうね。

…ずいぶん話が横道にそれたので、オオクニヌシノミコトと猪の神話に戻そう。

しかしこの神話、まったく脈絡がないというか、どうやって猪が石になったのか?ならざるを得なかったのか?という、起と結のみで承転がない物語のため、唐突な感じが否めない。もしや出雲国風土記をさらに掘り下げると、承転の部分に多少の肉付けが散見されるのかも知れないが、神社前の説明板でさえ、上記した程度の内容しか記されていないため、謎は残ったままだ。ただ、町名になるまでの影響力を持つのは、さすが神話の頂点に君臨するオオクニヌシノミコト譚という気もするが、あまねく神話民話の類は意味不明なものが多いものだし、この宍道の場合は、まず猪石と犬石ありきで、あとづけのパワーサプライ的なお話であるのは間違いないわけだから、とはいえ、石というしっかりした物的証拠があるぶん、この由来話には豊潤な神話ロマンを感じることができるわけだ。そしてロマンに加え、石という立派な舞台装置を使った、途中(承転)の部分にもドラマを盛り込んで欲しかったと思う残念な気分も、出雲国風土記をロマンとして楽しむアプローチのひとつに挙げたい。

とまあ、いろいろと御託を並べても、永年にわたり風雪を耐えて鎮座する3つの巨石の魅力の前には、そんな物語の穴など一瞬にして霧散する。ましてや世の東西問わず、巨石には一般的に信仰心が宿るものとされる。石(自然)を見ると人の心は落ち着く。猪石のような巨石であればなおさら心穏やかな気分になれるというもの。ぜひ石宮神社の巨石を眺め、神話の時代に思いを馳せてみて欲しい。馳せた思いの数だけ、それぞれの物語が息づくはずだ。





石宮神社の外観。拝殿のみで本殿がないのが特徴。鳥居脇にデンと構えるのが猪石。歴史を知らずとも、この神

石宮神社

苔むした感じが本当に生き物のような猪石。右に見える鳥居がおよそ3メートルとしても、かなりの巨体である

猪石

拝殿奥にある石柵に守られた犬石。田園地帯を挟む穏やかな山間のここだけ巨石が並ぶのは、不思議といえば不

犬石

神社の南側には山陰道が走る。何年と隔て、このような風景が広がるとは、さぞかし犬石もびっくりしているこ

周辺の景色