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神名火山の磐座

かんなびやまのいわくら 

見る知る出雲エリア平成時代

 『出雲国風土記』の出雲郡に神名火山(かんなびやま)があって、曽伎能夜社(そきのやのやしろ)に祀られている伎比佐加美高日子命(キヒサカミタカヒコノミコト)の社がこの山の嶺にある、だから神名火山という、と記されている。神名火山は今の仏経山に比定されており、標高366メートルの山頂には 曽伎能夜神社奥宮の跡とされる岩があるという。


 さて、今回はその頂上ではなく、山の麓にあって風土記の曽支能夜社とされる曽枳能夜(そきのや)神社に行った。場所は、出雲市斐川町神氷(ひかわちょう かんぴ)という所である。仏経山の麓を通る広域農道の脇にある。駐車場に車を止めて、石段を上がると境内が広がり、時折農道を通る車の音が聞こえてくる。本殿にはキヒサカミタカヒコが祀られている。
 拝殿の前には一抱えもある大きな岩があって、その解説版には「神魂(かみむすび)伊能知奴志(いのちぬし)之命 氏神 伎比佐加美高比古(きひさかみたかひこ)之命の御祖神にして延命長寿の神なり 出雲大社遥拝の岩盤(いわくら)と伝う」とある。ここから眼前の岩に向かって、遠く出雲大社を参拝できる場所となっている。鬱蒼とした林が無ければ、この岩の向こうに出雲大社の背後にそびえる弥山(みせん)を望むことができると思われる。
 本殿の後ろに回ると、いくつかの小さな社があって、その一つに伎比佐社がある。この社の祭神は、伎比佐加美長依彦命(キヒサカミナガヨリヒコノミコト)で、本殿の祭神であるキヒサカミタカヒコとの関係は不明だという。ただ、キヒサはかつてのこの辺りの地名で、それぞれが地域を守る神という説もあるそうだ。
 この伎比佐社の本宮が仏経山の中腹にあるというので向かった。登山口は曽枳能夜神社の南方500メートルのところにある本誓寺の少し奥にあるという。本誓寺のあたりに車を止めて、本誓寺から山へ向かう道を30メートルほど進むと、小さな川べりに「伎比佐の石神→」の小さな看板が足元にあることに気が付いて、コンクリート張りの小川に掛かる橋を渡ってまっすぐ進んだ。最初の家の脇を通り過ぎると道が曲がって、次の家の玄関へ向かっているが、それを曲がらずにそのまま真っ直ぐ山の方へ向かう細い山道に踏み入る。杉の木立の山道を5分ほど登ると山道のT字路に出る。ここで左方向に進むと山道の脇の木々にピンクの紐が結ばれていて、道案内をしてくれる。ここまでは、いささか急な登り道だったけれど、ここからは比較的なだらかな道となっている。ただ、雨の時には小川となるような道なので、好天の続いた日に登るのがお勧めである。途中で、斐川平野や宍道湖を一望できる場所もあって、気持ちが良い。30分ほどでこんもりとした林の中に入る。急にあたりが薄暗くなり、視界がおぼつかなくなるが、目が慣れてくると「伎比佐の岩」と手書きされた小さな看板があり、その右手に見上げるほどの岩がある。高さがおよそ3メートル、周りは30メートルほどもあろうかという巨岩が鎮座している。周囲にも小さな岩がゴロゴロしており、少し離れると大きな岩が幾つも重なり合っている場所もある。松江の熊野大社の元宮で見た岩が生まれている感じと同様な岩石の世界である。
 周囲の岩にサメの顔をした巨岩を見つけてしげしげと見ていると、かすかに水の流れる音が聞こえ、水音のする方へ進むと、小さな滝に行き着いた。 伎比佐の岩から40メートルほどの場所で、見上げるとおよそ4メートルの高さのところから、細い水の筋がキラキラ光りながら岩を濡らして滴り落ちている。この滝の周囲の木々は綺麗に刈られてた。巨岩と清水のセットは聖地の証なのかもしれない。

本誓寺(緯度経度:35.492969, 132.933982)
※緯度軽度をGoogleマップの検索窓に入れて検索すると場所を示してくれます。




この鳥居をくぐって階段をあがる

農道に面してわかりやすい鳥居

一抱えもある岩の塊

境内にある出雲大社遥拝の岩盤

木漏れ日に照らされた大岩

仏経山の中腹にある磐座

磐座の近くにある滝

真ん中ほどに細く白い滝の流れ