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鮮やかな赤、白、黒のコントラスト

あざやかなあか、しろ、くろのこんとらすと 

見る知る大田エリア平成時代

 出雲から西へ西へとやって来て海岸沿いから大田の市街地を南へ向かって抜けると、車窓の風景は山の緑に変わる。その山懐にある石見銀山の町は、江戸時代の風情を残す建物が数多く保存・修復され、赤瓦の古風な町並みが800メートルほど続いている。歩いていると白壁の建造物や、それとは対照的に黒く焦がした焼杉板の壁をした建物があり、こうした色合いが入り混じって今の暮らしを包んでいる。


●銀山をガッテンする絶好の場所
ぶらり歩きを楽しむために、まずは銀山のあらましを見ようと石見銀山世界遺産センターに車を止める。展示室の入り口には、丁銀と書かれた縦に15センチぐらいのキラキラ光る長丸い銀貨幣があって、なんだかリッチな場所なんだと感じる。中に入ると毛利元就、豊臣秀吉、徳川家康などのお馴染みの戦国武将たちが、宝の山である石見銀山を手中に収めようと策略を巡らしたのかを映像解説しており、知っている武将の話なので解りやすくて立ち止まって見ている人が数人いた。
その先には、灰吹(はいぶき)法という銀の精錬をする作業風景を紹介した模型、銀鉱石の採掘の様子を描いた絵巻物や採掘作業の人形模型などがあり、さらに坑道の間歩(まぶ)が実物大に再現された展示もある。展示室を進んでも、当時、世界的に見ても多くの銀を掘り出した場所だとは、すぐには信じ難かった。キラキラ光る銀貨幣からの印象とは全く違って暗くて狭い坑道を掘り、精錬も手作業であったのだと驚くしかない。
展示室を出ると壁に大きな案内地図があり、そこにある案内パンフレットなどを手にとっておくと良い。この後は、曜日と期間が限定されているが、石見銀山最大級の坑道跡「大久保間歩」見学ツアーに参加するか、いつでも見られる龍源寺間歩に行ってみるか、はたまた銀山の町並み散策かの選択となる。今回はまず町並みへ向かってみて腹ごしらえすることに。石見銀山へはこのセンターから出ている石見銀山公園・石見銀山資料館へのバスに乗ると良いだろう。
石見銀山公園からは龍源寺間歩に向かうこともできるし、町並みのぶらり歩きも良しである。街はずれの石見銀山資料館まで銀山川に沿っておよそ800メートルで折り返して帰って来ることになる。途中にそば屋が2軒、カフェなど食事のできるお店が4~5軒あるので、様子を見ながら気に入ったお店を探してみよう。
石見銀山公園を出て間もなく、銀山川にかかる石造りの橋を渡って行き止まりを右に曲がると赤い郵便ポストのある町並みが目に入ってくる。土色の土塀、赤瓦、板壁、ところどころに緑。のんびりした町並み風景が続いている。古民家を活かしたお洒落なカフェや雑貨屋さんもあって、それらの店に時おり足を止めながら、ひなびた風景や白かべと青い空に浮かぶ雲の様子に惹かれてシャッターを押したりして進んでいると「銀山でたった一つの菓子屋です」と聞こえて来た。声をかけられた道行く人がお菓子の試食をしている。

●石見銀山で唯一の菓子処
200年以上続くらしいお店で売っているお菓子は二種類だけという。一つは「げたのは」と呼ばれる三角形をした黒糖のお菓子。二枚をかるくぶつけ合うとカンカランと木製の下駄で歩いた時のような音がすることから「げたのは」と命名されたらしい。サクサクとした歯ごたえと素朴な甘さで、試食して購入する人も多い人気のお菓子。そしてもう一つの「銀山あめ」は大豆が丸ごと入った飴で、口に入れても甘みが強くない。つい噛むと、硬いはずの飴がホロホロと粉々になって口の中にひろがり、何粒かの大豆が残り、それをまた噛み砕くという黒砂糖ベースの変わった食感を楽しめる飴。飴を煮詰めすぎると焦げ臭くなるので、季節の温度、乾燥具合などを考慮しながら手作りで仕上げるとのことだった。どちらも銀山の鉱夫が口にしていたとものという。
飴を口の中で転がしながら行くと、代官所地役人旧河島家と記した古い家があった。ここは慶長15年(1610)銀山奉行大久保石見守に召し抱えられ、代々銀山附役人を勤めた家である。地役人とは、代官が数年で交代して行く中で、現地に住んで銀山統治の役を務めながら、農地を保有したり金融を行ったりして地域の経済活動にも関与していた武士である。そんな地役人の家が町並みにはいくつも見られる。

●赤瓦の町を見渡す山門の仁王像
河島家からすぐの銀山川を渡って、大きな岩山を見上げると、上の方に朱色の山門が見える。町並み案内パンフを見るとカメラのマークがあって写真スポットらしい。さっそく石段を上がってみる。山門の横からは町並みのはずれにある城上神社の鳥居までつづく空の青と美しいコントラストを描く赤瓦の町をみることができる。山門の中も覗き込んでみたら、朱に囲まれた大きな仁王像が私を見下ろしていた。

この石見銀山に関してGoogleMapで検索できる緯度経度を示します。

石見銀山世界遺産センター 35.105683, 132.451741
お菓子処有馬光栄堂 35.117356, 132.445572
観世音寺 35.118997, 132.446205




輝く丁銀と銀精錬をする人形模型

手前が丁銀、奥は人形模型

三角形をした、げたのはと大豆の混じる飴

げたのは と 銀山あめ

赤瓦の甍が続く町並み

観世音寺からの町の眺め

大きく手のひらを広げる姿の仁王さん

山門右側の仁王さん