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高浜駅

たかはまえき 

見る知る出雲エリア平成時代

 自転車とともに、川跡駅の2番ホームに停まっている出雲大社前駅行き一畑電車に乗り込む。この日は4月中旬の日曜日で、松江から来た2両連結の電車はほぼ満席。車窓からは田おこしされた田んぼがいくつも見えて、早くも水が張られた田もあった。もうすぐ高浜駅という線路沿いに一畑電車が2両あったので、さっそく高浜駅で降りてみた。およそ300メートル東に行くと、車窓から見かけた電車があったのは保育園だった。


◎スサノヲの腰掛岩
 さとがた保育園にある2両は昭和5年、開通の間もない頃に走っていた車両デハ1型の3号と6号だそうで、3号がオレンジ色、6号がクリーム色である。
 保育園から北の方に目をやると高い山の連なりが見える。この連山を地元では北山(きたやま)と呼ぶ。その中腹にスサノヲの腰掛岩というものがあるそうだ。北へ600メートルほど進んでからさらに東へ600メートルほど進むと、来阪(くるさか)神社が近づいている。来阪社と刻んだ石碑から神社までは、きつい登り坂が続く、それも約1キロメートルもあるので、自転車は道端に止めて徒歩で登った。神社の横に天王山キャンプ場があるため、道は舗装されている。
 神社の祭神はスサノヲで、背後の山は来成山(きなしやま)である。来阪社の石の鳥居に到着したら、右手の方に大きなスサノヲの腰掛岩がある。木立の間から出雲市内が見下ろせる。この岩にスサノヲが座って、眼下に広がる平野の治水、治山の構想を練ったと伝わる。境内への参道石段の途中の右手の林の中に、幹周りはおよそ5メートルのスダジイの大木があった。社殿はスサノヲを祀るにふさわしい大きく立派なもので、古くからの地域の信仰の篤さを感じさせた。

◎天平古道
 この来阪社から坂を下る途中で天平古道と記した看板を見つけ、それを進んでみると、ほどなく1軒の家に行き当たった。古道は続いているのか不安な気持ちで家に近づくと、古道はなんと、家の玄関の横から左の方へと、細い山道が伸びていた。古道は続いている。しかし、自転車も置いているので引き返した。この天平古道は、平成10年に北山の自然と史跡を活かす矢尾(やび)・日下(くさか)の2つの地区の人々が、古代に出雲大社と美保関を結ぶ北山山腹を生活路として往来していたと伝わる天平古道を整備したもの。およそ5キロメートルの整備がなされたという。
 天平古道と現在の国道431号の間にあって東西に伸びる旧道は、山手往還と呼ばれ、古くは東から出雲大社へ向かう参詣道であった。

◎岩観音
 その道を、さらにしばらく進むと栄泉寺というお寺への石段に着く。そこには奇怪な巨木と大岩があってその下に、岩を守るように祠があった。説明板によると、中には岩に描かれた絵が祀られており、その絵は如意輪岩壁観音座像で平安期の宮廷画家の巨勢金岡(こせの かなおか)の作と伝わるとある。そういえば、出雲大社から日御碕に向かう途中にある筆投げ島は、巨勢金岡が島の美しい風景を描こうとして描ききれず、筆を投げたので、名付けられた島名と伝わっている。巨勢金岡は出雲に旅に来たのだろうかと思いながら、樹齢400〜600年というケヤキの大木が大岩を包み込んでいる姿を見ると、自然のとてつもない大きな力を感じるとともに、長年に渡って手入れされた祠に、人々に大切にされている様子がうかがえた。

◎おたれの滝
 ここから西へ200メートルほど進むと、右手に矢尾西集会所があって、その建物のトタン板の壁に、天平古道、おたれ観音と熊見滝などと記されていたので、好奇心から向かってみた。しばらくして舗装の道から山道となって右手に石の水神があった。そこからさらに50メートルほど山に入ると、おたれの滝(熊見谷の滝)があった。昭和61年に島根の名水百選に選ばれており、里人は茶の湯に使うのだそうだ。滝の周りの岩は一枚岩という訳ではなく、ガラガラと崩れ落ちそうなほど不規則な形状である。その昔、ある行者がこの滝に「うたれ」ながら祈願をしたことから「おたれの滝」「おたれ観音」と呼ばれているという。干ばつのときには雨乞いの行事もあったらしい。滝のたもとには、二つの祠が並んでいた。右がおたれ観音、左が弘法大師という。


☆1日フリー乗車券1500円
一畑電鉄には全区間で1日乗り降り自由の乗車券があり、この乗車券に自転車の持ち込みが含まれています。自転車と共に何度乗り降りしても1500円です。なお、自転車1台の1回の持込み料は310円です。

この高浜駅に関してGoogleMapで検索できる緯度経度を示します。

さとがた保育園  35.390638, 132.749312
スサノヲの腰掛岩 35.402713, 132.755283
岩観音      35.396943, 132.744945
おたれの滝    35.398164, 132.742585




高さ、およそ2メートルほどの大岩

スサノヲの腰掛岩

もくせいの生垣の家が多い旧道です

山手往還(もくせい往還とも呼ばれる)

岩とそこから成長した大樹が印象的な場所

地元では岩観音と呼ばれる

高さおよそ5メートルから落ちる一筋の滝

おたれの滝