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木綿街道の小さなレストラン

もめんかいどうのちいさなレストラン 

知る食べる出雲エリア平成時代

 朝日のまぶしい光が降って来る静かな白壁の通り木綿街道。出雲市平田町の古き香りを残す500メートルほどの通りには、今でも往時のにぎわいを感じさせる醤油を醸造している店が3軒もある上、造り酒屋も1軒あるのだ。それらに並んで300年前の製法で甘い「生姜糖」を生みだすお店も大きな木の看板を掲げて元気に営業している。


 そんな通りにある築約100年の古民家が、小さなレストランになって再生しているところがある。その名はトラットリア814。平日の昼間でも満席なるほど人気がある。それもほぼほぼ女性のお客様だ。シェフの前道さんにパスタ料理を作ってもらった。島根県産の白イカと地元野菜のパスタである。パスタの間からのぞいている白イカが食欲をそそる。そして、地元産の野菜をクタクタに炊いてソースにしてあるそうだ。出雲の春菊、ブロッコリーをはじめカリフラワー、小松菜、そしてカブの葉とのこと。旨みの多いイカのゲソが混じったぷりぷりの食感の味わいに、いろいろな野菜の味が押し寄せてコラボしてくる。数多くの味を組み合わせて舌を喜ばすことに長けている。前道さんは、素材の旨みを大切にしている。カブは生でも美味しい。それをいつもと違う食べ方で楽しみを提供したいという思いから、地元産野菜は自分で農家を探して開拓したという。
 続いてテーブルに置かれたのは自家製チーズケーキ。料理の季節感を大切にしており、冬は焼き菓子、夏はアイスも作るという。パンも自家製である。
 このトラットリア814は平田の木綿街道にあると既に書いた。実はこの場所、以前はCafeことんというお店があった。それは木綿街道の歴史・文化や暮らしぶりを守って、まちづくりをしていこうという木綿街道振興会が企画・運営していたカフェだった。そのメンバーが、前道さんの腕と人柄を見込んで料理店をしないかと誘った。お隣の県の鳥取市生まれの前道さんは、出雲の町で飲食の仕事をするうちに、出雲人が気に入り、これから街をつくろうという木綿街道の想いやそのコミュニティのすばらしさに惹かれて店を始めたという。
 テーブルはCafeことん時代のものを使い、木製や金属製やベンチスタイルなど様々なデザインの椅子は、みんなお店を開く時にと集めていたものだそうだ。同様に集めていたという器類は、厨房から溢れ出して、細いカウンターが崩れ落ちそうなくらいドドドンと並んでいる。その器の向こうに腕を振るう前道さんの姿が見える。店を開いてこその、自分の好きなものに囲まれた仕事は、まったくストレスフリーで、とても楽しいとのことだ。そうした解き放たれた感性の全てが料理に向かっているのだろう。
 取材をしていると、ランドセルを背負った通学の子どもたちが店の中をのぞいていく不思議な光景があった。話を聞くと、以前授業としてお店を取材に来た子どもたちだという。


住  所 島根県出雲市平田町814
電  話 0853-27-9424
営業時間 11:30〜15:00(L.O.14:00)
17:00〜22:00(L.O.21:00) 夜は予約のみ
日曜営業
定休日  火曜日




814の店内は奥に深く、奥は平田船川に面している

店主好みの椅子がある店内

イカの香りが迫ってくる

島根県産の白イカと地元野菜のパスタ

生クリームの白とローズマリーの緑がアクセントに

自家製チーズケーキ

器が積まれている厨房の前のカウンターも景色

店主好みの器が見られる