メニュー


ここにもカンナビ山が

ここにもかんなびやまが 

見る知る出雲エリア平成時代

山を御神体とする社があるというので、資料を探してみたら磐座の白黒写真が載っていた。さっそく磐座好きの友達を誘って雲南市木次町にある室山に向かった。近くには、国内でも有数の美味しいワインの里となった奥出雲葡萄園がある。その入り口を通りすぎ、釜石という伝説地も通り過ぎて、山を上がって行くと舗装が途切れた。そのまま車で行くかどうか迷ったが、山道を歩いた。そこには、キジの鳴き声や鳥のさえずりがあった。


100メートルほど歩くと少し広い場所に出て、向こうに鳥居が見え、その右手に上の方に向かって石段が伸びている。そこに拝殿であろう、どっかりと座っている。鳥居まで行くと、横に布須神社由緒記が立てられていた。そこには、『延喜式』、『出雲国風土記』に記載の神社とあって、背後の山は『出雲国風土記』にある御室山としている。ただ、学説では、『延喜式』、『出雲国風土記』に載る布須神社は、同じ雲南市加茂町に鎮座する布須神社ともいわれている。御室山の方は、同じ雲南市大東町中湯石室谷の奥の山(標高478m)に比定されている。
いろいろと、曰くのありそうな神社であるが、由緒記の末尾に、室山の裏側には「寺床(てらとこ)」と呼ばれる場所があり、平安時代の初期から鎌倉時代ころに「四十二坊」があって山岳仏教をして栄えていたと伝えられ〜」とあって、神仏習合の頃に神仏に祈りをささげる場所として参詣者が集まっていたのかもしれない。
前置きが長くなりすぎた。さあ、鳥居をくぐって石段をあがってみよう。石段は御影石だろうか。硬い石段の先にあった境内はとても狭く、拝殿のガラス戸の前に賽銭箱も無いので、ガラス戸を横に押してみる。すると、するすると開いた。中を見ると正面に餅や賽銭を載せた台が見える。近づくと、なんとその向こうにガラス窓を通して、外に鳥居が立っている。そして鳥居の足の間からは、小石を積んだ上に立てられた御幣が見える。それが本殿を示しているのだろう。山がそのまま神の坐すところ。
拝礼して外へ出て、拝殿を右から回り込んで裏に行くと。小ぶりであるがどっしりした石の鳥居と御幣の立つこんもりと盛られた石の山がある。この裏山が、神が籠るとされる山。この出雲地方で呼ぶところの神名火山(かんなびやま)なのだろう。杉の木の間から山頂らしき山容が見える。そんなに距離もなく山頂に行けそうである。小さな雑木の少ない本殿左側から山に入る。インターネットでここへ来た人のブログなどを見ると、夏には、御影石の石段も見えなくなるほど草や笹が生い茂っていたから。この山も春以降は、そう簡単には歩けないだろうと思われた。30メートルほども登ると人の背丈よりも大きな岩があって、そこを迂回して頂上に着く。が、頂上に磐座らしき岩は無い。頂上は細く長く東の方へ伸びていた。歩いて行くと、100メートルほどで山は下り始める。山岳仏教の痕跡である寺床は山頂の北側というが、急な斜面の下の方に平らな広がりなどは見えなかった。
磐座は、さっきの山頂下の大きな岩かもしれない。そこまで戻って岩を見上げ、スマホに収めて来た白黒の写真と見比べると、やはりこの岩のようだった。手を合わせて拝礼し、写真に収めた。
神名火山の後は、布須神社へ向かう途中にあった釜石に向かう。釜石という小さな看板のあるところで、道の脇に車を止めて、細くゆるやかな登り坂の山道を歩く、歩き始めて2〜3分で、二本の大きな杉の間から岩が見える場所に着いた。大きさが1〜2メートル前後の丸みを帯びた岩である。そんな岩が4〜5個あって、一つは人の手で割ったような岩があった。人工的な力が加わったように思えて、つい石に手を伸ばして触ってしまった。ざらざらした岩質は花崗岩のようだ。
この岩には伝説がある。そのむかし、スサノヲがヤマタノオロチ退治をした物語に、スサノヲがお酒をヤマタノオロチに飲ませて酔わせ、退治するという場面がある。そのお酒を造るときに使った竈跡なのだという。そうか、だとすれば、加工の跡があってもおかしくは無いか、と妙に納得。近くに、その酒米を作った田や醸造に使った水を汲む池もあったという。
帰りがけに寄ったお酒はお酒でもワインを造る奥出雲葡萄園から、室山の美しい山容が遠望できたことは幸いだった。

布須神社(雲南市木次町) 35.294082474491965, 132.9386381379721
釜石           35.29238482025299, 132.93941901766283
奥出雲葡萄園       35.288752936852475, 132.93085405399876
布須神社(雲南市加茂町) 35.35105602326277, 132.88572440962835




高さ2メートル弱の石の鳥居の奥に小石が積んである

拝殿裏の鳥居と石積み

幅4メートル、高さ2メートルぐらいの岩が露出している

裏山で発見、磐座か?

ゴロリ、ゴロリと直径1メートル前後の複数の石が座っている

杉の木の間に見えた釜石 

眼下の林の中から美しい台形をした山が立ち上がっている

奥出雲葡萄園から室山の遠望