メニュー


ヤマタノオロチ伝承(その4)

やまたのおろちでんしょう そのよん 

見る知る出雲エリア平成時代

木次の図書館で見つけた郷土誌の「案内誌〜自治会の記録〜」には、壺神さんの他にも、今まで聞いたこともないヤマタノオロチ伝説の地が三カ所も記載されていた。それは「はらかじ」「尾瀬(おのせ)」「座座舞(ざざまい)」の3カ所である。しかし、場所が分からない。そこで、気になっていた壺神せんべい30枚入り450円を西日登交流センターで購入する時に、この伝説の地について聞いてみた。


交流センターの年配の男性職員さんが、小さく折り畳まれたパンフレットを持って来て、それを開いて、しせきマップというイラスト地図の面を広げて教えてくれた。3カ所ともに、交流センターから近い場所である。その「歩いてみよう西日登」というパンフレットを手に、まずは「はらかじ」へ。交流センターからすぐ近くの斐伊川に出ると、水のほとんど無い川底が広がっている。そこは中国電力逆調整池というもので、そこと斐伊川の間に桜の木がたくさん植えられた堤防へ渡り下流へ向かって進み、堤防が無くなりあたりと言われたので、行ってみると、水門があった。このあたりなのだろう。しせきマップの地図では、「はらかじ」は道路の北側であるが、地名は道路の南側、逆調整池側だと男性職員は言っていたから桜の土手側だ。「はらかじ」とは、スサノヲに酒を飲まされたヤマタノオロチが、腹の中が火事のように熱くなり、たまらず水を飲んだ場所という。壺神さんのあんな小さな壺の酒など飲んでも、ちょろっとだけだろうが、腹が焼けるほど熱かったのか。八塩折の酒って日本酒ではなくて、アルコール度数の極めて高い蒸留酒なのか?
この桜土手は中央さくら公園と呼ばれており、後日、桜の季節に行って見た。枝が地面に付くほどに下がってお弁当食べながら眼前に満開の桜を楽しめる場所であった。また、逆調整池というのは何かというと、発電用ダムの下流に発電所のダムから放流された大量の水を一時的に溜める池で、そこに水門を設けて、水量を調節しながら放流できるようにしたもので、この西日登の逆調整池は、およそ12キロメートル上流にある北原発電所からの水量調節をしているものだという。
 さて、次の尾瀬は「はらかじ」の下流にあるという。ヤマタノオロチの尾が横たわって、川の水が堰き止められた場所という伝説がある。行ってみると、今は堰が設けられて、斐伊川の水が流れ落ちていた。こんな感じに水を堰き止めたならば、ヤマタノオロチの尾部分でも、その直径は4〜5メートルはあったんだろうと想像できる。川幅はざっと100メートル。「はらかじ」からの距離は約400メートルである。とするとここでは、ヤマタノオロチの全長は500メートル以上あったと思われる。この長さは、ヤマタノオロチ伝承(その1)の草枕山から尾留大明神までが600メートルほどあったのと、およそ符合する。
次は「座座舞」である。ここは、西日登交流センターから約400メートル西方の山中である。満福寺参道入り口の前の川向こうあたりとのことだった。行ってみると、満福寺を示す看板が立っており、そこから下を流れる川向こうに、言われたように屋敷跡のように平らな広い土地があった。ここが、ヤマタノオロチを退治したスサノヲが地域の住民と喜びを分かち合って、仮の神楽殿を作って一緒に「神之嶋」「アナ嬉シキカナ」と祝い舞い踊った場所という。座座舞は元ここにあった家の屋号だそうだ。
さて、ここ満福寺、もとは隣の三社神社と神仏混合していた時代があり、神宮寺の格式をもち祈祷道場として日登山と号し、天平17年(745)に行基の創建と伝えられている。仁王門の両尊と本尊の千手千眼観世音菩薩は行基の作といわれ、千手千眼観世音菩薩は光背を含め高さが約2.6メートルもあり33年ごとに御開帳される秘仏。一方、三社神社には、神社の明治14年(1881)に古社であることを記した御由緒記があって、そこに古器物として、ヤマタノオロチが口から吐いた直径45センチほどの青い玉石が2個あるという。とすると人を飲み込むことが可能なほど大きな口だったとも思えるのだが。それにしても、ここでも長さが数キロメートルの巨大な怪物のイメージにはならない。
この西日登から斐伊川をさらに遡ると、ヤマタノオロチが住んでいたと伝わる天ヶ淵という場所があるという。そこに行けば、ヤマタノオロチの大きさがある程度は、わかるのではないだろうか。(その5につづく)

参考
日登村誌資料第1集 1953年版 発行 日登村教育委員会
木次町誌             発行 昭和47年11月3日 木次町


はらかじ    35.270776, 132.903016
尾瀬      35.272198, 132.898564
座座舞     35.270038, 132.911220
三社神社    35.271534, 132.911054




逆調整池の北端で水門がある

はらかじ と伝わる場所

高さ2メートル近い堰となっている

尾瀬

山裾に広く平らな場所がある

中央奥の山すそが座座舞と伝わる

参道の奥に鳥居、拝殿、本殿と順にある

三社神社 左奥に満福寺