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古代からの贈り物 アースカラーの和菓子

こだいからのおくりもの あーすからーのわがし 

知る食べる出雲エリア平成時代

古代出雲歴史博物館のショップで、おちょぼ口には嬉しい一口サイズのお饅頭(まんじゅう)を発見。その名は「古代米和菓子 黒米・赤米饅頭」。モチモチとした皮は古代米(といわれる赤米・黒米)が原材料で、ほんのり桜色と紫色。小豆の漉(つぶ)し餡(あん)と白餡のナチュラルな甘味にほっと和む。やさしさあふれるお饅頭の製造元で美味しい和菓子と暖かなもてなしを受けた。


「古代米和菓子 黒米・赤米饅頭」の製造元「御菓子司とみや」は、なだらかな坂の先にあった。店先には「生菓子付きお抹茶セット」の手作り看板。まずは、好みの生菓子と抹茶で一服と、近所の蕎麦(そば)屋さん帰りというご婦人方とともにお菓子選びに胸弾ませた。なにしろ、ショーケースは10種類以上の生菓子で大賑(にぎ)わい。悩んでいる間に常連さん達は「いつものね」と十個単位で買っていく。
「この近辺で生菓子は10時や3時のお茶の時間に欠かせない存在なんです。当店ではお茶の時間はもちろん、来客用やお使い物として身近に感じていただけるような和菓子作りを心がけているんですよ」と若女将の山根のりさん。和菓子本来の繊細さに兼ね備える素朴(そぼく)さと庶民性。その按配(あんばい)をはかるように菓子作りは完全手作業。次々と和菓子を作り出す二代目店主の山根勝(まさる)さんと三代目の雄(ゆう)さんの掌(てのひら)に贔屓(ひいき)客のお茶のシーンも託されている。
工房で黒米の饅頭作りを見学して驚いた。蒸す前の饅頭は色白なのに、蒸しあがりは艶(つや)のよい紫色。自然の力はなんと神秘的なのだろう。ちなみに、米の産地は県内有数の米処、雲南(うんなん)市頓原(とんばら)町。桜色の饅頭は赤米が原材料で蒸しあがりは桜色。黒米でカステラも作られていてこちらは見事な墨色。古代米は白米に勝る栄養素を含んでいるだそうだから、愛らしいお菓子に力強ささえ感じられる。
製品開発に携わった雄さんは、赤米や黒米独自の美しい発色、風味、食感を引き出し、饅頭らしいふくれ具合を生み出すまで、ずいぶん、思考錯誤を繰り返したのだそうだ。だから、新潟県の米の栽培農家から「よくぞここまで米の特長を生かしてくれた」と激励がよせられたときは、職人冥利(みょうり)に尽きたそうだ。
「日々、一生懸命に菓子作りに励む義父や夫の姿を見ていると、一つ一つを大切にお客様にお渡ししなくちゃと思うんですよ」とのりさん。この店の隠し味は和菓子を囲む菓子職人と家族の絆なのかもしれない。