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My庵・山里カフェ

まいいおり・やまざとかふぇ 

食べる松江エリア平成時代

 松江市の南、市街からそう遠くない山間の忌部(いんべ)は熊山(くまやま)地区。車が一台通るほどの道でガードレールもないので、町から来た人はびっくりするという。そんな細い道を上がると茅葺きの農家が現れる。これなのかな、と思って近づくと、どうもここらしいっていう感じがすれば、それがギャラリ一木空風&カフェ・ドリである。


 知り合いを連れて4人で訪れた。窓ガラスから中が見える。明かりが灯り人影も見える。外観は農家だが、縁側にブドウの房のような形をした洋風の電灯が並んでいる。玄関の木製の引き戸を開けて中にはいる。上がり口に棚があって、アロマ関係の雑貨などが並んでいる。開いた居間の方に進むと、そこの畳の間に形もまちまちなテーブルがいくつか並んで座布団があって、人が居る。なにか雰囲気がつかめない。部屋の中の景色は和・洋・亜の国籍とアート作品の混ざり合い、それは尋常でない。

 この大いに変な古民家カフェの主人は飯島三枝子さん。この古民家を購入したのは10年前、それまで古民家なんて購入する人の気が知れないと思っていたそうだが、今にも倒れそうなこの茅葺き古民家を見たとき「かわいい」と思ったそうだ。それまで友人につきあってあれこれ大きな古民家ばかりを見て来たので、これは小さいから「まっいっかと」即決だったそうだ。それを聞いた友人達が皆心配して、古民家の改修を率先して手伝ってくれた。また、近所のお爺さんが茅葺きの職人さんで、取り置きしてあった茅をおしげもなく使ってくれた。そうこうして3年、なんとか人に来てもらえる空間になった。すると知り合いがやってくるようになって、コーヒーやおにぎりを出してもてなしていた。そのうち飯島さんの娘さんも手伝うようになってカフェになったという。それから7年引き続き改修しながら蔵から始まったカフェは、居間にも広がり、ギャラリースペースも充実した。

 10年に及ぶ改修では、それぞれのパートをその時々の自主的担当者と飯島さんが改修方法、出来上がりイメージを納得がいくまで意見を出し合って、最終的に飯島さんがゴーサインを出していたという。ここが得も言われぬごちゃ混ぜのイメージなのに混乱に陥ってないのは、飯島さんが演出家として采配をふるい続けていたからなのだろう。

 ランチが運ばれて来た。飯島さんの言うように、フキノトウや野甘草など、この熊山地区の野菜と自然をアートな器に盛り込んだ家庭料理である。つづくコーヒーや紅茶の器もアート。ハア〜ッ〜と力の抜ける私の庵になる。

 10年の間、時々知り合いの作家の展示会を開催して来たが、10年を経て改修も一段落し区切りがついたので、これから展示会の開催回数を増やしたり、自らも陶芸の比重を高くしたりしたいとのこと。松江-大東線に道路に新しい看板も立てた。その新しい看板を見てやって来た若者4人がチロチロと炎の上がる囲炉裏のある部屋に座り込んで、囲炉裏の鉄瓶の湯で入れた美味しいコーヒーを飲んでいる。あなた達もこんな古民家カフェしてみたいの?と聞くと、男性も女性も「やりたい」と声を上げていた。

 なお、この熊山地区は忌部の一角にあり、33年に1回、神職によって演じられ御託宣神事が含まれる熊山荒神神楽というお祭りがある。前回は昭和63年の開催だったそうなので、次の開催は2020年頃に第44回目が開催予定だそうだ。1回目はというと西暦569年?。こんな歴史がある熊山を飯島さんは大好きである。

ギャラリ一木空風&カフェ・ドリ
〒690-0036
島根県松江市東忌部町1514
電話090-2803-4580(飯島)
http://kokufu.web.infoseek.co.jp
営業日:木・金・土(11:00〜17:00)
※日曜日も営業する時がありますので、あらかじめお問い合わせください。
※ランチは限定15食なので、予約をお勧めします。




畳を取り除いた板の間に机、座布団が並んでいる

古民家カフェの内部

季節の野菜が並んでいるランチ

定番のランチ

かわいい白いウサギの箸置き

ウサギの箸置き

ギャラリーにも並ぶ陶器のカップ

ランチの飲み物