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神迎神事

かみむかえしんじ 

参加する出雲エリア不明

出雲大社から西へおよそ900メートルの稲佐の浜。全国から集う八百万の神々を迎える『神迎祭』(かみむかえさい)が行われる。ここは、国譲りの儀が行なわれたと伝えられる地でもある。かがり火の中で行なわれるこのお祭りには多くの人たちも集まる。人びとはその神事の一部始終を見守る。


◎稲佐の浜
神事が行われる1時間前、出雲大社の大駐車場に車を停め、稲佐の浜へは徒歩で向かう。稲佐の浜の入り口で御幣(ごへい)を受け取り、浜へと足を運ぶ。神々の通り道となる筵(むしろ)が敷いてあるが、踏み入れてはいけない道。堂々と中央を歩いていく人もいるが注意したほうがよさそうだ。砂地の足元に気を配りながら浜へと向かう。海水浴の時期以外は人の気配が滅多にない稲佐の浜には、“神様”のお出ましを待つ人が群がっている。古くから続いているこの神事に、これだけの人が集まるのはこの何年かのことであるという。
午後7時。神事が執り行なわれる斎場の左右は注連(しめ)縄が浜へ向かって張り巡らされ、その中央には篝火(かがりび)が焚かれる。時どき、月の光に隣の人の顔が照らされる。それまで海側から吹いていた風が急に向きを変えた。祭事の場を覆っていた煙と火の粉が海側へと向きを変える。太鼓の音とともに辺りは緊張の空気に包まれる。祝詞(のりと)が上げられ、粛々と御祭りが始まる。居並ぶ神職の先には「龍蛇(りゅうじゃ)様」と「ひもろぎ」が鎮座している。「龍蛇様」は海から上陸される八百万の神の先導役。神々は、2本の「ひもろぎ」に宿る。このとき、フラッシュ撮影は禁止されているのだが…。ひとつふたつと光が瞬く。それが少し寂しい感じもする。

◎神迎の道
およそ30分。浜での神事は終わり、いよいよ出雲大社へのご案内が始まる。ふたつの提灯が先頭になり、「龍蛇様」と2本の「ひもろぎ」はそれぞれ白い布垣で覆われる。その後ろに笛と太鼓が続く。神々の滞在地でもある出雲大社へ向かい、ゆっくりと神々の導きが始まる。
「ウォー」という神職の低い声は「警蹕(けいひつ)」といい、およそ1キロメートルの『神迎の道』を歩く間、休まず続けられる。列の後ろに続く信者や見物人の流れはおよそ200メートル。
神迎の道を行く行列の間は一言も発してはならない。

◎人びとの「神迎」今昔
一昔前、沿道の家いえには「神様を見ると目が潰れる」と、窓の隙間からそーっと覗き見て、神様が無事に出雲へお越しになったことを確認していた。
現在では、家族あげて玄関先に出てその行列を見届ける。道いっぱいに広がる行列に出会ってしまった仕事中の車も、しばしそれが通り過ぎるのを待つ。どんなに急いでいても、神様が最優先。それが、「神迎の道」である。

◎神楽殿
いっぽう、『神迎の神事』が行なわれる神楽殿前にも多くの人が集まっている。
午後7時30分過ぎ、浜からの使者が“行列出発”の知らせを伝える。それと同時に神楽殿へ入ることが許された。おもむろに、それぞれが持参した袋に靴を入れ、前へと詰めていく。神楽殿はたちまち人で埋まっていく。殿の中央には神様の通り道が用意されている。
行列が出雲大社境内に入り、静かに見守る拝殿と本殿の脇を通る頃、神楽殿の明かりは一気に消え、「ウォー」という神職の合図をきっかけに笛と太鼓で神々を迎える。「龍蛇様」と「ひもろぎ」が神棚に鎮座され、静かにお祭りが執り行なわれる。神事はおよそ20分。
本殿の東西に、19の社が連なる十九社。ここは神々の宿舎とされている。神楽殿での神事が終わり、ふたつの「ひもろぎ」はそれぞれの十九社へと納められる。その後、神楽殿前では御神餅(ごしんぺい)が配られ、御神酒(おみき)をいただく。神迎の夜が静かに更けていく。




篝火に照らされて、神事が始まる

神迎神事

神々の行列を歓迎する沿道の住民

街を行く神事の行列

神楽殿で待つ人達

出雲大社神楽殿

神事の後は御神餅をいただける

御神餅