メニュー


ヤマタノオロチ伝承(その2)

やまたのおろちでんしょう そのに 

見る知る出雲エリア平成時代

「八塩折(やしおり)の酒に酔いつぶれた大蛇を退治した須佐之男命は、この御立薮(おたてやぶ)で大蛇の尾を開いて宝剣を得られたが、その宝剣の上に怪しき雲があったので、「天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)」と名づけて天照大御神に献上になり、後、三種の神器の一つとして今も名古屋の熱田神宮に祭られている。」と尾留大明神旧社地(天叢雲剣の発祥地)に立つ解説板に書かれていた。


ここは、八口神社から約600メートル南方の丘陵地の中である。草枕山に横たわったヤマタノオロチの頭に対する尾の場所となる。長さ数キロメートルの大怪物と思っていたから、ことのほか小さいではないか。と思った。
天叢雲剣が後にヤマトタケルの手に渡り、後に草薙剣(くさなぎのつるぎ)と命名されて三種の神器となるのだが、その発祥地には、「八岐大蛇ゆかりの伝説 尾留大明神天叢雲剣発祥地」と刻まれた御影石の石碑が立っている。その後方には自然石に御代神社旧社地趾と彫られた石碑があった。さらに、先の解説板には続きがあって、天叢雲剣発祥地の御立薮は延享元年(1744)に約200メートル北方、つまり八口神社方向へ戻るあたりにあったが、斐伊川の氾濫にあって、この丘陵地に移転したとある。また、御代(みじろ)神社と合祀されたことがあると書かれている。この御代神社は、今は移転して尾留大明神旧社地の前の道を東へ500メートルほどの場所にある。
江戸時代に松江藩でまとめられた地誌『雲陽誌』には、「風土記に御代社とあり、素戔嗚尊八岐大蛇を斬たまひ此所に鎮座なり、故に尾留と号す」とある。『ふるさと二千年・三代郷土誌』によると、古くは三代原の御立薮に鎮座していた。とあるので、御代神社と尾留大明神は、もともと同一の場所にあったらしいが名称は尾留大明神であったことになる。『加茂町誌』によれば、明治4年(1871)に御代神社と社名が変わり、さらに、少し離れた日吉神社の境内に移転して、日吉神社を合祀して御代神社として残っているということらしい。
次は、ヤマタノオロチを倒したスサノヲが、その首を埋めた場所である。それは、御代神社から斐伊川を2キロメートルほど遡り雲南市役所を越えたあたりにある八本杉である。その場所に行くと、大きな杉が八本聳え立っており、道路に面した鳥居の正面に「神代遺蹟 八本杉」と彫られた高さが3メートルほどある石碑がたっている。『雲陽誌』には、「八本杉八俣大蛇の八つの角を埋める所、神代よりしるしの杉なり」とある。また、近くにあって『出雲国風土記』に記載の神社である斐伊神社の社伝には「須佐之男命、大蛇を繊滅しついに万民蕃息の道を開き、蒼生をして再び鬼神妖邪の憂なからしめんと、蛇頭を此地に埋め、記念として八株の杉を植栽したまう。故に八本杉という。」とあると『新修木次町誌』は伝えている。また、現在では八本杉は斐伊神社の飛び地境内だという。植えられた八本の杉が高く伸びて、空を見上げるとヤマタノオロチに見下ろされているような感じである。この杉は、そんなに太く無い。これは、明治6年(1973)の洪水で杉が流されて、植え替えられたものだそうだ。斐伊川の氾濫はたびたび起こっており、「寛永10年(1633)5月28日は、終日の豪雨はことのほかひどく大洪水なって氾濫し、数百年生い茂った里方の八本杉の根本をあらい、杉の大木はついにたおれてしまった。そして、同時にこの付近の丘も崩壊し、地脈も横断されてしまった」(『木次町誌』)という。
このように何度か流された八本杉の場所は、『出雲国風土記』に樋社という同名の神社が2つ記載されているが、その一つが斐伊神社、もう一つが斐伊波夜比古神社と考えられており、出雲国風土記研究者の関和彦氏は、八本杉が斐伊波夜比古神社のあった場所で、洪水で流されることが多く、斐伊神社に合祀されたのではないかとしている。また、八本杉が何らかの祭祀場所であった可能性もあるだろう。としている。八本杉から東へ100メートルほど離れた斐伊神社は、八本杉から歩いて行ける。車では、JR木次線があるため少し遠回りする。神社は丘の上にあり、斐伊川の氾濫を避けることのできる安全な場所である。鳥居をくぐって上る石段の途中で振り返ると、家並みの上に八本杉が空に伸びているのが見える。


尾留大明神旧社地  35.331742, 132.876484
御代神社      35.330079, 132.881002
八本杉       35.305279, 132.902066
斐伊神社      35.304864, 132.903376




新旧の石碑が二つとか説看板が立っている

尾留大明神天叢雲剣発祥地

田んぼの向こうにある左手の小山が草枕山

尾留大明神旧社地から草枕山を望む

敷地の奥に鎮座するどっしりした石碑

八本杉の石碑

立ち並ぶ民家の屋根の向こうに一際高い杉林

斐伊神社から見える八本杉