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弥山(みせん)さんに登る(1)

みせんさんにのぼるその1 

見る知る出雲エリア平成時代

大社に来たなら一度は登ってみてほしい山がある。出雲大社から東へ約1キロメートル、地元で弥山(みせん)さんと呼ばれて親しまれている弥山である。標高は506メートルと低いが眺望は絶景で、広い出雲平野から日本海が一望でき、そこに稲佐の浜、出雲大社、海と陸を分けて弓なりに伸びて、国引きの綱と伝わる園の長浜全体、その向こうに島根県の秀峰三瓶山を望むのである。


登山口は古代出雲歴史博物館の東にある無料の大駐車場みせん広場の北側の山麓である。登山口に近づくと鹿除けの金網柵があって、それを潜って100メートルほど行くと左手に登山口の看板があり、竹の杖が何本も立っている。そこから登山道は1.5キロメートルほどで1時間半もあれば登ることができる。
登山口から3合目までは、砂と小石の急な坂道となっている。足元が滑りやすいため階段やロープが据え付けられているが、靴底がギザギザしたトレッキングシューズが必須である。トレッキングポールがあるとなお良いだろう。なければ竹の杖を借りて行くことをおすすめする。この最初の急な坂は、弥山登山の愛好家が石を運んできて階段にするなど時折手を加えているが、それを自然は容赦なく崩し続けている。登山の前日や前々日あたりに雨が降っていたらラッキーで、このあたりの地面が湿っていて滑りにくくなっていることだろう。
その2合目から3合目に向かう途中に伝説の岩がある。1300年ごろというから鎌倉時代だろうか、武家の奥方が夫のために21日の祈願を弥山で行っていたところ、19日目に悪人に殺され、その後、奥方の霊魂がそこにあった大岩にとどまって、女人の弥山参拝を止めたという。この伝説は、昭和5年12月17日に起きた事件に由縁がある。その日、大阪の男1人、女4人が弥山頂上にある御山神社に参詣、その時、女性が神憑りして、先の弥山が女人禁制になっている由来を語ったというもの。この事件によって弥山登山の女人禁制の掟が解禁されたという。大岩には弁天姫之命を祀り、昭和6年春には巨岩に祠も設置されたという。弁天姫之命は岩姫さんと呼ばれ諸難諸病を除く神として多くの人が参拝したという。今回、地元の方々に聞いて、写真を手がかりに2合目から3合目の間を探し発見した。高さ2メートル余りの丸い岩があった。しかし、祠の姿は見えなかった。案内看板もなく、分かりにくいが、登山道から木立の間に見える。
そんな3合目からは登山道の傾斜は緩やかになり緑の林の中を気持ちよく歩ける。4合目は眺望が開け大社の街や日本海を見ることができる。この場所は少し広くて木製のベンチがあって休憩できる。さらに進むと5合目にもベンチがあって南の三瓶山へ向かっての眺望がある。このベンチは、弥山登山の愛好家がある時、親子連れの登山者がここに居て、地面に座りこんだ子どもが辛そうな表情をしているのを見て、この5合目を小さなお子様の山頂ということにしようと思いつき自作した子ども用ベンチだという。これまでに大人が座ったからか、一度壊れたそうだが、今は大人が座っても大丈夫なベンチに作り直されている。
この5号目から9合目までは多少急な坂道はあっても歩きやすい。しかし9合目から頂上までは弥山の岩肌が剥き出しになっており、山岳登山の醍醐味を味わえる。梯子坂と異名のある修験の行場であったのではないかと思えるほどの険しい登山道となる。この弥山から平田の旅伏(たぶし)山に向かって連なる出雲北山山脈は、縦走路が整備されているが、アップダウンが多く、アルプスなど世界の山岳登山に向かう周辺の登山家が、重いリュックを背負って、訓練をする山々として有名なのである。
やっと頂上に至ると絶景が広がり、かわいい頂上標識が出迎えてくれる。

弥山に登る(2)へつづく。

参考文献
大社の史話72号所収 「岩姫さん繁盛記」著長岡寿男

弥山さん頂上   35.405363, 132.703386
弥山さん登山口  35.400579, 132.694519
みせん広場駐車場 35.397321, 132.693137
岩姫さん     35.400944, 132.696472




弓形に曲がる園の長浜を境に陸と海が広がる

弥山さん山頂からの眺め

木立の中にたたずむ丸い形の巨岩

弁天姫之命を祀ったという大岩

木造りのベンチからも頂上と似た眺望がある

子どの山頂5号目ベンチ 

木製の緑色に塗られた板に水仙の花の絵などがあしらわれ出雲きたやま506メートルとある

愛される弥山の山頂標識