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今も変わらぬCOFFEEの味わい

いまもかわらぬこーひーのあじわい 

見る知る食べる平成時代平成時代

大社にはノアールという創業40年になろうとする喫茶店がある。神門通りの坂の一番上からおよそ400m下って行ったあたり、レンガ造りの外壁を持つ出雲商工会の前にある。大きな窓をくり抜いた上の白壁に、小さくCOFFEE ROOMとあって、丸みをおびた文字でノアールとある。木製の扉を開けて、中に入ると「いらっしゃいませ」の声と共にコーヒーの香りがやってくる。


店の歴史は古く、大正4年にノアールの店主の祖父が始めた饅頭屋としてスタートした。おりしも明治45年6月に出雲今市駅から大社までの鉄道が開通し、店の南の方にできた大社駅と出雲大社を結ぶ神門通りができたのが大正4年である。信者さんたちが行列をなしてお参りされていたという好立地の場所であった。それから孫であった店主がこの店を喫茶店として開業したのが昭和50年(1975)。その年はどんな年だったのかというと山陽新幹線が開通した年で、流行りの歌は、シクラメンのかほり(布施明)、ロマンス(岩崎宏美)や港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカだった。店の名前は、馬場通りにあった本店の屋号「若木屋」をカタカナで表した喫茶ワカキヤ。その狭かった店を昭和58年に改装してノワールという新しい名前にし、それから今日まで変わらず喫茶店として続いて来たという。

昔から変わってないですよ、と言われたモーニングセットは、厚切りのトーストの半分と目玉焼き、サラダ、コーヒーである。喫茶店の定番とも言える組み合わせで、選択肢はこれのみである。コーヒーもまた昔の喫茶店の定番であるUCC(上島珈琲)の豆を、改装当時から使っている。熟したコーヒー豆の色である渋い赤色のラッキーコーヒーマシンが、ガガーと音たてて回り、挽かれていく。味わいも香りも今頃のコヒーチェーン店のように尖っていない。柔らかな昔ながらの味わい。今も昔と同じ豆を使っているそうだ。値段は、税抜きでコーヒー400円、モーニング500円である。

さて大社といえば、ぜんざいがある。神門通りには大社の町の賑わいを復活させるきっかけを作った出雲ぜんざい壱号店があるが、ノアールは昔からぜんざいを出しているという。いただいてみると噛みごたえのる分厚い焼き餅と大粒の小豆が、ぜんざいを食べている感を堪能させてくれた。お餅は地元の杵つき餅、小豆も地元で煮てもらっているという。塩昆布と緑茶の取り合わせも引き立っていた。そんなぜんざいも税抜きで650円と安い。常連さんから値段を上げたら?と言われるそうだ。

その常連さんたちは、もっぱら地元の方々。それも漁師さん、大工さん、自営業などの皆さんが、ここでモーニングを食べて仕事に向かうのだそうだ。だから開店が朝7時30分。そして喫茶店というと店内に音楽が流れていたりするものだが、ここはBGMは流れていない。常連さんたちにはカウンターの上に取り付けられたテレビだそうで、特に朝はみんなで朝ドラを見ているという。そんな中でこの頃は、観光客の若い人がチラホラ入店してくるという。昭和レトロ好きなのだろうか、そんな人たちは「この店、いいですね〜」と言ってくれるそうだ。

COFFEE ROOM ノアール
営業時間 7:30〜14:00ごろ
定休日  水曜日
電話   0853―53―4208




外観の特徴は白壁に大きな窓がある

COFFEE ROOM ノアール

お餅が大きくて重なっている

これぞ!ぜんざい

店内の大きな飴色になった傘が付いた照明器具

レトロな喫茶風景

厚切りの半切りトースト

定番のモーニングセット