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お似合いですよ!人力車

おにあいですよ!じんりきしゃ 

見る知る体験する出雲エリア平成時代

大社の風情ある町並みには人力車が似合う。明治時代や大正時代の大社の通りの写真を見ると、多いものでは8台もの人力車が分かる写真があって、中には山高帽のような黒い帽子を被った紳士が乗っている。明治23年(1890)にラフカディオ・ハーン(小泉八雲)が大社に来た時も人力車で馬場通りを進んで来たのである。明治45年には大社で50台の人力車が営業許可を受けていたという。


今、大社を走る人力車の色は黒いのだが、座席は赤い緋毛氈(ひもうせん)だからオシャレで人目を引く。人の乗った大きな人力車をしっかりした足取りで曳くのは雲州人力社中の糸賀太郎さんだ。スタスタスタと小気味良いテンポで進んでいく。

人力車は鉄の車輪と思い込んでいたが、糸賀さんの人力車はタイヤがついている上、ショックアブソーバというバネ装置が地面の衝撃を和らげてくれる。雨の時や雪の時はどうするのか気になって聞いてみたら。座席の後方に折り畳まれた幌を広げて座席を覆うのだそうだ。日差しが強い時もこれを使うという。自動車のオープンカーのように天候に応じて幌の屋根ができるのだ。また、寒さ対策には、赤い膝掛けが常備されている。

糸賀さんは京都で人力車を曳いていたそうだ。専門学校に通っているときに見かけた人力車をカッコイイなーと感じたそうで、卒業して人力車を曳く俥夫(しゃふ)になったという。京都で10年の修行を積んで、出雲市の南にある雲南市の観光協会に所属し、県内でも有数の桜並木のある木次の桜土手で人力車を曳くようになると、大社の中学校、高校時代の同級生から地元大社で曳いてほしいと言われた。

そしてとうとう2022年7月。出雲大社に向かう神門通りを糸賀さんの人力車が走り始めた。コースはいろいろあるが、おすすめは神門通りから古代出雲歴史博物館の脇を通って社家通りへ向かい、樹齢1000年といわれるムクノキがある命主社、出雲大社の神事で使われる水の湧き出す真名井の清水などをめぐるコースだそうだ。

今回、そのコースを7年以上大社のガイドをしている出雲神話ガイドの前田みのりさんに乗ってもらって巡ってみた。前田さん曰く、「何度も出雲大社を巡っているが、歩くと時間がかかるので歩いたことのない通りを人力車は走って行ってくれたので、知らない神社や景色も楽しめた。また、人力車はワンボックスカーより目線が高くなるので、屋根の上にこんな飾りがあったのかと、これも普段目にしないものが見えてきて、とても新鮮だった。大社から大山の雪景色を今回初めて見たが、見える景色について教えてもらえることがとても良かった。人力車に乗ったら周りの行き交う人たちから注目されるだろうなと思っていたが、それはその通りで、そこはちょっと気力が必要でしたね(笑)」とのことだった。

その前田さんが、乗るなら稲佐の浜コースがもっと良いだろうという。神在月に全国から集まった神々が、縁談や商談のことを決める神議り(かむはかり)が行われると伝わる上の宮を経て、国譲り神話の舞台であり、日本遺産の「日の沈む聖地」にもなっている稲佐の浜を巡るもの。見どころも多く、人力車の上で神話や伝説などをたくさん聞くことができるでしょう、とのことだった。

出雲大社はリピートするお客さんも多いが、営業を始めて2年目ともなると、人力車にもリピーターさんというお得意さんが生まれているそうだ。糸賀さん曰く、そうした人たちは、地元の人の案内や説明、会話を存分に楽しもうとする人たちだという。生まれも育ちも大社の糸賀さんなら観光だけでなく、地元の人の行きつけの居酒屋とか美味しい蒲鉾屋さんとか何でも聞けそうだ。人力車を引きながら、すれ違う地元の人や通学途中の中学生にも挨拶していた糸賀さんは、地元の人からも「頑張ってよ〜!」と応援されている。

雲州人力社中
住所    島根県出雲市大社町杵築南
      神門中833−3(しんもん横丁広場)
TEL     080-6303-5229
定休日   不定休  予約推奨
MAIL   unshurickshaw@gmail.com




お客さまを乗せて人力車を引いている姿

神門通りで人力車に乗車

大社の町を流れる堀川沿いを走る人力車

この川沿いから大山が見える

出雲大社近くの いのちぬしのやしろ のムクノキの大木の前にいる

人力車を降りて見学もご案内

出雲大社の東に隣接する社家通りの古い街並みが背景

大社の町に似合う人力車