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餅に恋する甘味処「大社門前いづも屋」

もちにこいするかんみどころ「たいしゃもんぜんいづもや」 

食べる出雲エリア平成時代

 縁結びを祈願して訪ねた出雲市大社町の出雲大社。参拝後に立ち寄った甘味処ですっかり餅に恋してしまった。きっかけはきな粉と黒蜜仕立ての一皿の串団子から。もちもちとした食感に魅かれ、とうとう餅メニューを全制覇。出雲地方の正月気分も味わった。縁結び祈願にあわせて餅肌のスイーツに会ってみてはいかが?


 出雲大社から日本一背の高い大鳥居へ続く坂道の途中。門と染め抜きされた大きな幟がはためく甘味処「大社門前いづも屋」でふと足が止まった。窓に貼られた「門前団子」のポップに目が留まったから。一服がてら、その一皿を注文することにした。
 運ばれてきた長細い皿に行儀よく並んでいたのはきな粉をたっぷりまとった3本の串団子。一個一個の団子が大振りでなかなかのグラマラス。黒蜜をからめていただくと、もちもちとした食感の合間に、まろやかな甘味が広がった。また一つ、また一つ。何個食べても、味覚や心がとろけそう。持ち帰りもできるので、天気のいい日は戸外で食べると、旅がより楽しくなりそうだ。
 「島根には美味しい食材がたくさんあるんですよ」と胸を張る店主の多々納光教さん。団子の材料は県内有数の米処奥出雲(おくいずも)町の仁多(にた)で栽培されたもち米100%。仁多は中国山脈の山懐。水よし、空気よしと自然豊かで、寒暖の差も激しいことから米作りに最適な地なのだそうだ。
 ならば餅三昧ときなこ餅にぜんざい、出雲雑煮と立て続けに注文する。出雲地方はぜんざい発祥地といわれていて、小豆雑煮と呼んで正月に食べる地域もあるそうだ。出雲雑煮は、甘辛味のツユに丸餅と岩海苔、カツオ節がたっぷり盛られただけとシンプルながら、旨みは抜群。何杯でもおかわりできる。ことに地元採れの岩海苔の磯風味と繊細な歯ごたえはこたえられない。旅先でその地の正月気分を味わうのはなかなか粋だし、いい土産話にもなりそう。一品、一品しっかりデジカメにおさめることにした。
 「既成にとらわれず、美味しいものを創造したい」と多々納さんは涼菓も考案中。かつては東京の飲料メーカーで商品開発を手がけ、当時開発した福岡県の筑後平野産の冬ニンジンのジュースは大社の町で密かにブレイク中とか。ならば、新作も期待大。そのお味は……暖簾をくぐってお試しあれ。